記憶にあいにいく

旅のはじまりへ

寺島夕季ロング対談

外の記憶の中に自分の記憶を重ねて、

描くところから、一冊の本ができました。

制作しながら思ったことや、

​描くことについてなど。

そして、記憶にあいにいく、

あたらしい旅の入り口へ。

いつもながらの、

自然体な対談をしました。

​話し手:Yu(寺島夕季)

聴き手:sb(スロウボート・つゆき)​

記憶に記憶を重ねて、さらにその先へ。

いつもながらに褒めて伸ばしまくりの、

ちょっと長いおはなし。

写真のことも少しだけ、話させて頂きました。

sb:

上からいっちゃっていいかな

Yu:

了解です◎

sb:

いいとも!

あれ

Yu:

いいとも!

sb:

押し付けいいとも笑

寺島さんはバカ話が一番面白いような気がする

Yu:

失敗

sb:

楽しむということが大事だということだ

 

Yu:

やめてくださいよーがんばってしまいますよー

笑い取りにいこうとしてしまいますよー

sb:

三人兄弟の末っ子はお笑いの傾向がある

 

Yu:

確かに!

sb:

お調子者が多い

 

Yu:

確かに!

sb:

真面目を装ってる

 

Yu:

真面目だからこそですよ

sb:

深いなー

さすがだ

それでは気を取り直して笑

 

Yu:

はい笑

sb:

、、、褒めてるだけで10分経ってしまった笑

なぜだか最後には褒めたくなってしまうのだ笑

 

Yu:

末っ子の扱い方として◎です

sb:

ツボを心得てる

・・・

sb:

もともとネコの絵を描いたりしてたよね、ワタルキヨシ

(寺島さんが子供の頃から実家で飼っている2匹の猫たち。

名前は、高田渡とキヨシローから母親がつけたもの)

 

Yu:

はい、ワタキヨの鼻口辺りを描いたことはありますが、

ネコを描いた意識ではなかったです。

sb:

あっそうなんだね

アイコンの

 

Yu:

そうなのです、口の形や表情から

連想させるものを見せたかったので、

たまたま近くにいたネコを使った感じです。

sb:

うんうん

Yu:

人間のそれだと直接的過ぎる気がしたので。

ネコはワタキヨがいることもあって、

好きだから描くというには、家族過ぎると言う感じがしていました。

sb:

距離が近すぎるのかあ

Yu:

そうですそうです。

 

sb:

今回モチーフで渡した写真からネコの写真を沢山選んでくれて

僕もネコに対する気持ちの持ち方があって

 

Yu:

はい

sb:

写真でネコばかり撮ると、

ネコ好きで可愛い面が目立ってしまうような気がするけど

僕が撮るネコって、結構過酷な環境にいるネコが多くてね

Yu:

そうなんですね、野良ちゃんとか

隣人的な距離感を感じます

sb:

毎日を必死で生きてるような

元々そういう街を撮るのが好きというのもあるけれど

だから、かわいいというよりは、

対等より上の感じで向き合ってて

半分神さまみたいなね

Yu:

なるほど

隣人よりも

sb:

うん

そうだなあ

畏敬の念も入って

自分を振り返るというか

 
Yu:

上手く言えないけどわかります

心を映すというか

sb:

ネコの絵はとてもよく描けてたね

空気のようなものも

Yu:

ありがとうございます!

それはやっぱり簡単に言ってしまえば

猫が好きに尽きるのですが

sb:

僕はさっきのように思っていたけれど、

いろいろ先には言わなかったんだよね。

見たまま感じたままを描いて欲しかったから。

選ぶことも力のうちだと思う

Yu:

そうですね。

猫の写真に限らず、

先に色々聞いていたら引っ張られてしまうと思ったので、

私もわからないことがあっても聞かないようにしました。

sb:

うんうん

そこらへんは繊細な部分だよね

絵を単純に模写する訳ではないから

 

Yu:

本当にそうです。場所とか露木さんの気持ちとか、

もし事前に情報があったら、迷って描けなかったと思います

 

sb:

そうだね

 
Yu:

とにかく写真と対話して

特に猫は、

露木さんも強い思い入れがあることだけは聞いていたし、

私も猫を家族にしているから、

この子はどういうことを考えているのか、とか、

自分の中で納得してから描くようにしました。

sb:

写真というのは、世の中にあるものから、

付随した意味をなくして本質だけにするような、

そんな一面があるように思っているから、

見る人それぞれの角度から見てもらえることが一番なんだと思う

だから、今回題材に使ってもらえてとても嬉しかったな

Yu:

私もとても楽しかったです!

sb:

物凄い勢いで描いてくれたものね!

描けば描くほど良くなって

 
Yu:

勢いだけは笑

sb:

最後の方何か超えたような感じがした

 

 

Yu:

やっぱり猫は好きだからこそ難しいという意識があって、

あえて自分から近づけなかったんですが

今回こういう機会を頂いたので

 

sb:

そうかあ

じゃあこんなに描いたのも初めてくらい

 

Yu:

初めてです!

そうだったんだ!

覚悟を決めて描いてみました笑

そしたら、楽しかった笑

sb:

ふふ

Yu:

やっぱり「目」でした

sb:

本で見てみると、ネコの視点から視点、

気持ちから気持ちへ、

ジャンプしていくみたいな感じ

 

Yu:

うんうん

sb:

目が良く描けてるなと最初から思ったよ

目の奥に入ってくみたいな

Yu:

写真1枚から読み取るには、目が1番の情報源で

何を考えているかを読み取ろうとすることで、

ポーズ、体勢の意味が感じられて、

絵のテーマのようなものが出来上がる流れが、

とても心地よかったです。

 

sb:

今回も描いてもらいながら褒めまくったな

嘘はなかった

 
Yu:

散々持ち上げて、引っ張り上げて頂いて

 

sb:

持ち上げたら持ち上げただけ伸びる感じ

最強の末っ子だ

Yu:

正解はないと言いながらも、

やっぱりこれでいいんだ!と自信をつけてもらえなければ、

描けなかったですね笑

sb:

肯定力はあるからな笑

Yu:

さすがリーダーです

sb:

肯定力だけ突出してる笑

なかったことをやってるんだから、

プラスの心を持てればそれでオッケーだよ

今回、画材も新しくしたんだったね

デッサンの企画展からだったかな

Yu:

はい、ドローイング展のときに初めて使ったケント紙が、

思いの外はまって、今回もそれを使いました。

sb:

なんか今の感じと、

繊細心の動きみたいなものの相性がとてもいいと思う

ドローイング展の東北の絵を見てそう思ったよ

それを見て、声を掛けたんだと思う

 

Yu:

ケント紙は、紙の目がなくてツルツルの表面で、

きれいなにじみや洗いとか、水彩画らしい描き方には

あまり合っていない素材で、

 

sb:

そうなんだね

コントロールしきれないのがいいと言ってたっけ

Yu:

そうなのです。

全部受け入れて描き進めるしかないところがいいみたいです。

有能な紙だと、ついつい甘えてしまうので。

末っ子なんで笑

sb:

それはなんとなくわかるような気がする

全部理解できることはつまらないよね

Yu:

本当に、そうなんですねー前は全部理解したいと思っていて、

それがベストな事だと思っていましたが

sb:

うん

Yu:

そうではないという事が、

結果的に紙を通して描き方になって、

表現にうまくつながった気がしたのが、

ドローイング展の絵だったので、

それが露木さんに見て頂けたのかなと思うと、嬉しいです!

 

 

sb:

そのタイミングも縁だね

たまたまあの時にいたのも縁だし、

それがここまで繋がったのだから立派だ

Yu:

本当に!

sb:

引っ越してしまうのを知ったのは後からだったけど、

ほんと声掛けられてよかったと思う

 

*スロウボートを始めて程なく、

新婚さんは京都に引っ越されたのでした。

Yu:

タイミング、ですねー

sb:

そう

筆が呼び寄せたのだ

それに、自分でも描くべきテーマがあるみたいだ

Yu:

はい。最近ずっと意識しているのは、記憶の中のものです。

sb:

うんうん

古い記憶?

Yu:

古いものに限らなくて、

すでに目の前になくなってしまったもの全般なのですが、

記憶の中にしかないもの

 

はい、もう失われてしまったもの。

写真に残すほどではない、とるに足らないような物だけど、

頭の中では鮮明にあるものを、ちゃんと思い出したい。

sb:

鮮明に記憶に残っている

写真に残すほどではないものかあ

Yu:

例えば昔使っていたお茶碗とか

sb:

うんうん

記憶を辿る旅

本能がそれを欲してるのだろうなあ

Yu:

当たり前過ぎて気にも留めなかったものが、

突然目の前からなくなることが、

本当にあることを知ったんでしょうね。

sb:

うんうん

Yu:

でも頭の中では細部まで完璧でも、

絵に描けるかは別問題で笑

sb:

寺島さんならできるよ

Yu:

本当にできなくて、難しいのです。

sb:

鉛筆画とか見てると、そう思う

それは東北のことでもあるよね

Yu:

そうなんです!あれは、練習をしているのです。

まさにそうですね。

sb:

ああやっぱり

鍛錬かあ

ドローイング展の絵にもあったものね

Yu:

やっぱり、手を動かして覚えたことは、

目で観察しただけよりも忘れないと思うので。

sb:

うんうん

体を通して記憶する

Yu:

ドローイング展の時も2枚くらい入れましたね。

他の日常のモチーフと混ぜて。

sb:

フェンス越しの風景と

遠くの山の景色の絵かな

山田線

Yu:

そうです!あれは新幹線から見た雪景色なんです、

10日目くらいに祖母を東京へ連れ帰るときでした。

 

sb:

うんうん、おばあちゃんちが岩手なんだ

 
Yu:

そうです。でも他のモチーフと並列で、日常として描きました。

sb:

うん、とてもいいことだと思う

全て地続きだから

とてもリアリティがあった

物語りというか

 
Yu:

あれは写真に撮ったものを描いたので、

またなんとなく記憶を引き出すというテーマとは違いますが、

sb:

うんうん

Yu:

物語らしさは確かに、

狙い通りです笑

sb:

シーンとシーンの連なりが見えて

しめしめだ笑

 

Yu:

しめしめ笑

大切なものたちですね。

sb:

うん

なんかそのシーンとシーンの連なりのようなものは

今回の本のネコと、食べ物とか、

アジアの風景とか、そこにも感じられて

鉛筆画にもね

寺島さんの中を通ることで、糸が通っていく感じがしたな

そういう力があるんだと思う

Yu:

いやいやー

sb:

記憶をつむぐ力

それが最近のものなのかは分からないけど

 

Yu:

水彩画に関しては、

露木さんの視点で撮られた写真があることが

大前提としてあって描いたので、

もちろん自分の記憶そのものではないですが、

私の感覚ですが、露木さんの写真は、

いい意味で露木さんの存在を

感じさせないところがある気がしまして。

 

sb:

おお、わかってるね

 

Yu:

へへ

sb:

さすがだなー

 

Yu:

そうなんですよ

sb:

本質を突いてる

 

 

Yu:

今回の作品集では少なめですが、

特に街角の写真などは、

例えば道路を渡るときに左右を確認した、

そのときに見えた風景くらいの何気なさを感じたりしまして、

sb:

シャッター押す瞬間以外は自分で意識して

選ぶ要素はできるだけなくすように心がけてる

一瞬だけで構図を決める

 

Yu:

さすが

sb:

寺島さんがわざわざ不便な紙を使うのと似てるのかも

 

Yu:

洗練された何気なさなのですが、

そうでしょうか

sb:

どんなことでも、どんどん慣れてくるでしょ

だから、不確定な要素を取り入れる

 

 

Yu:

そう、結局ケント紙にも慣れ始めてしまっているのです

sb:

さすがだ

 

Yu:

なるほどー

sb:

例えば自分の今回の個展だと、

川下でたまたま拾った、たまたま割れたガラスを、

たまたま雲が切れた川の上流の河原の光で撮ったり

山の上に登って撮ったり

 

Yu:

ええ

たまたま、から繋がること

sb:

でも背景持って行ってるから、

見た目には分からないけど笑

それもまた面白くて

最高にひねくれてる笑

 

Yu:

見せることと見せないことがあるというのも、

大事な気はします。

sb:

そうだね

すべては選択だから

 

Yu:

露木さんのストリートスナップは、

露木さんの存在が見えないからこそ、

自分の風景として見ることができて、

画面に写らない外側には何があるかわからないけれど、

自分の記憶の中にある風景をそこに重ねる余白があるので、

知らない風景でも、自分なりに理解して描けたと思っています。

sb:

うん

景色に記憶が重なることってあるよね

写真撮るときに思うんだけど、

こう目の前の景色の、線や色や、ひかりの配置が

感情や記憶を引き起こすのかなあと

同じ配列になったときに

 

それだけではないとは思うのだけど

瞬間的にフレーミングする時に良くそう思う

 

Yu:

何かがピタッと合う瞬間なんでしょうか。

sb:

うーん、記憶が縦につながる感じかな

 

Yu:

なるほど

sb:

海であったり、木々であったり

要素は様々だけど

 

Yu:

縦なんですね!

横道ですが、今回の制作方法は、

露木さんの切り取った風景を見た私が、

そこから受け取った記憶の風景を、描いた絵、と、

層になってるなーと思いながら描いていました。

sb:

やっぱり記憶がテーマなのだなあ

 

Yu:

そのようです!

sb:

記憶だけを頼りに描くというのは究極だと思う

 

Yu:

描けないですねー笑

絶対に記憶そのもの、寸分違わずなんならなくて、

sb:

記憶は鮮明なのだ

Yu:

色々総動員して、

総合的に見て「それ」と納得できるものになれば

いいのでしょうか、難しいテーマですね。

sb:

合わせる答えも記憶の中だ

Yu:

そうだー笑

 

sb:

面白いテーマじゃないか

(第3の猫の)ビアンカもぜひ

Yu:

いいテーマ見つけました笑

sb:

安易な方にいかないのは、

寺島さんのいいとこだと思うぞ

Yu:

ビアンカ!また会ったことないけど、

なんか会った方がいいのか会わない方がいいのか、悩みますね笑

テーマ的に笑

sb:

そこが一番の悩みどこだ

Yu:

永遠の謎、みたいなテーマ笑

色々楽しみになって来ました

sb:

さっきのケント紙もそうだけど、

一度慣れてしまうと、

慣れなかった時には戻れないから

 

そのテーマはとてもいいと思う

永遠に飽きることがない

次作は半年後ということで

Yu:

本当に!今回の作品集のお話が、

最終的に自分のテーマへと繋がって、

とても嬉しいです。

ありがとうございます

sb:

最高じゃないか

Yu:

半年…!

目指し、ましょう!

か?

sb:

永遠のテーマだけにもう少し必要かな笑

Yu:

そうですね…永遠に笑

sb:

半世紀くらい

Yu:

長い目で

sb:

いや、寺島さんは締め切り決めるくらいが丁度いいのだ

Yu:

きゃー

sb:

知ってるぞー

Yu:

知られてるー

sb:

使い勝手のいい紙に甘えてしまう末っ子だからな

Yu:

頑張りまーす!

sb:

では最後に、本を見た感想など

Yu:

はい!

sb:

思わず自分の写真の話も入れてくれてありがとう笑

Yu:

予定通りです!

sb:

さすがだ

Yu:

へへ

sb:

ありがとう

Yu:

こちらこそです!

本を見た感想は、、、

嬉しいです!

自分の絵が作品集になったこともですが、

「本」という形のもの、

お皿や服の用に日常的な手触りのあるものになった事が嬉しいです。

 

sb:

そうだね

手に取れるのがいい

ぎゅっと詰まってるのだなあ

Yu:

絵が絵のままで、でも生活の一部になるのがいいですね。

sb:

うん

宝物のようだね

Yu:

手の中にある喜びです

sb:

絵を描くのが最後には楽しいことだと伝わってきたな

それが一番大事なことなのだと

Yu:

最後には、そうなれました。

sb:

きっとそれも予定通りだ

Yu:

もちろんです

sb:

キリがいいみたいだ

褒めまくりロングインタビューになった笑

 
Yu:

ロングロングインタビューになってしまいましたー

ありがとうございます!

sb:

(30分のつもりが2時間半も話してしまった笑)

今回の書き下ろし、

本当に頑張ってくれた寺島さん(末っ子)でした。

コントロールできないものを選ぶことには、

とても共感したり。

​記憶を巡る旅は、

まだはじまったばかり。

​その柔軟さがあたらしい絵の力になりますように。

© slow boat , 2018