ちいさなこえをききにいく
あらいいづみロング対談
本が完成して
まだ興奮冷めやらぬ中、
個展を目前に製作に取り組む
あらいいづみと、
すこし長めのおはなしをしました。
話し手:Idu(あらいいづみ)
聴き手:sb(スロウボート・つゆき)
あらいいづみ作品集、いのちかたちが完成、
群馬での個展を目前にして、最後の追い込み中。
手を休めて、少し長めのおはなしをしました。
sb:
やり取りを見返してたら、
すごく沢山していてね
ほんとキャッチボールしながら
本ができたなあと
Idu:
そうだねー すごく投げあったねぇ。
全然関係ないかもだけど
今日知り合いの作家さんきて、
私の作品から音を感じるって。
詩美さん(後述、ギャラリーピカレスク松岡詩美さん)も
前そんなこと言ってたことある
sb:
うんうん
感じることは沢山あった
Idu:
つゆきくんも?
sb:
音というのかな
耳鳴りのような感じかな
ひかりのおと
Idu:
耳鳴り…? なんとなく聴こえる
おぉ
sb:
周期的なパルス
Idu:
ひかり
サラリーマンしてるとき「ひかり」ということばが
頻繁に意識のなかにでてきて
気になって仕方なかったときあったけど
この世界のぞいてみたら
ひかりをテーマにしてる人たくさんいた。
魅力的なのかもねぇ
sb:
そうなんだ
Idu:
自分がひかりを求めていたのかも
sb:
まわりを見過ぎたら、
本の作業はできなかったかもなあ
作る側だとね
Idu:
まわり?
sb:
まわりというか、何かを参考にするとか
Idu:
うん
知識やら情報か
sb:
そういう意味では、
ほんとに作品的な作り方をしてる
本自体も
Idu:
たのしみだなぁ
sb:
うーん、出来上がったの見た時、
少し手が震えた笑
Idu:
それはかなりのものだ
めちゃくちゃたましい入ったもの
sb:
うん
縁もあった
Idu:
つゆきくんだから本当にお任せできたなあ
意外と細かいとこあると思う、
作品に関しては 他はおおざっぱだけども
sb:
うんうん
色んなことは程度の問題だし、だから、
そこに嘘がないかが重要なのだと思う
Idu:
嘘か…昔からつけなくてだから大変なこともあった
でも、ずっと自分には嘘をついてたから
つらかったのかもしれない
ピカレスク / Picaresque
わたしにちょうどいいアート。
をモットーに。
渋谷区参宮橋にある、
素敵で入りやすいギャラリーです。
あらいいづみの作品も取り扱っています。
垣根の低さが程よく、
いつ行っても楽しい場所です。
(写真はオーナーの、松岡詩美さん)
【基本営業日時】土日祝 11:00〜18:00
【最寄駅】小田急線 参宮橋駅 / 京王線 初台駅
【住所】〒151-0053 東京都渋谷区代々木4-54-7
ピカレスクHP
https://picaresquejpn.com/
あらいさんページ
sb:
ピカレスクのおかげで本まで繋がった
Idu:
本当にねぇ。
ほんと偶然だったから
sb:
グループ展と同じ期間に個展
Idu:
ありがたいこと限りなし
sb:
それが2月で
Idu:
今年だよ
まだね
sb:
あっという間のことだ笑
Idu:
うまくいくものは早いのかも
sb:
ぴたっとはまったのだ
Idu:
うん。うまく行きすぎて あまりにも普通な感じ。
sb:
そもそもいうと、
大学の時には会っていたのだけど
(つゆきが大学1年の時、あらいさん、
安藤さんは同じ大学の4年生でした。)
Idu:
そうだよー
ずいぶん会ってなかったよ
sb:
ほんとそうだね
Idu:
つゆきくんが前回個展した3年前?久しぶりに会った
sb:
ああ確かにそうだったなあ
大学の時も、写真をよく見てくれてて
Idu:
アンディー(スロウボートにも参加、安藤智仁さん)
がけっこうマメに遠くてもDM送ってくれたりして
sb:
うんうん
Idu:
そうだよ〜 今でも覚えてるよ
なんだか強烈な印象だったんだよ
本人は静かな感じなのに何だろうって
岡本さんと話したものよ
sb:
あはは
何も知らない分、
好きなことやってた感じだったなあ
今もそうだけど笑
Idu:
それが大事だ
sb:
うんうん
Idu:
アンディーが私も写真部だったと勘違いしてたから、
便りをくれてたのが幸いした
sb:
勘違い笑
Idu:
人生のふしぎ
sb:
半生におよぶ
Idu:
アンディーは部長だったし
やけにきっちりした印象だったから、
自分とは違うタイプって思ってたけど
意外に違わなかったという…
まるくなったかなアンディー…
sb:
ああそうかも
Idu:
誕生日が1日違いだっただいぶ後で知った。
sb:
そうなんだ笑
すごいことだ笑
Idu:
あれ、誕生日近いと似てるとこもあるのかー
なんて思ったりして(後づけ)
sb:
星が近い
sb:
あらいさんも写真を撮っていて、
そこから今は水彩がメインになって
写真と水彩の違いはなんだろ
Idu:
それもふしぎなんだよね。
sb:
あらいさんにとって
Idu:
自分でも違いはありそうで無いのかもしれない。
ただ、写真だけやってたときは みえないものを撮りたいのに
撮れないから描くということだったかもしれない
sb:
写真はあるものをとらえにいくでしょ
Idu:
うん
sb:
絵を描くことはこちらからとらえにいくのが強いのかな
Idu:
あぁ
sb:
うけいれる、というイメージもあるけど
Idu:
ベクトル。そういう意味ではイメージをあらわす的な
sb:
0から作り出す、外に向かうイメージ
Idu:
そうだね!
自分が今までに見てきた自然、
ひかりや風いろんな気持ちが
自分のフィルターを通して出てくるのかな
最初はことばないと描けなかったそういえば
無意識に記憶を辿る
ことばをたよりにして
sb:
ことばかあ
タイトルがついていたよね
個展のときのものは
Idu:
タイトルのことばが何故だか
褒められることもあったり
sb:
うんうん
Idu:
作品よりも 笑
sb:
ふふ笑
Idu:
そしてタイトルが 長かったりして
sb:
ことばを元にして作品を描いてるなら、
元のことばがいいは褒め言葉だ笑
Idu:
そうかなー
sb:
川で言えば源流がきれい
Idu:
ことばと絵で、完成形みたいなのはあったかな
sb:
うん
今もそうなのかな
Idu:
おー 源流?
sb:
ことばがあって
絵をイメージするような
Idu:
そういえばね、 話してて気づいたけど
最近ことばに頼りすぎなくても
描いちゃうときもある
そして後からことばを探す
sb:
ゆっくり変化してる
Idu:
それって毎月のドローイングの効果かもなあ
地味に効いてきてる
sb:
一貫したテーマもある
Idu:
そうだね、 いのちのかたち
詩美さんよくつけてくれたなと
sb:
うたまる師匠が付けたんだ
Idu:
もうそれ以上言うことありませんみたいなね
そうそう
sb:
本のタイトルもそのものを使ったね
Idu:
個展の打ち合わせで
どんな方向性でいくか話したときに
他の案は ことばのもりだったか
sb:
うんうん
Idu:
あらいさんの絵は身体性も感じると
sb:
よくわかってる
Idu:
そう思う
そうなんだよー
私よりみてるかもと思うくらい
だから信頼できるの
sb:
非常にフィジカルな面がある
Idu:
絵から感じるの?
動きみたいな…もの?
sb:
思考ではなくて、
身体を通してできたものだということ
とても伝わってくるな
同じく本人よりよく見てるから笑
Idu:
ことばは思考?だけど 出てくると身体性。
経験かな。
自分のことは分かりにくい
sb:
(あらいさんの)ことばはね、
多分写真に似てるんだ
記憶に重ね合わせて
しっくりきたものを捉える
Idu:
なるほど
sb:
うん
写真が絵に置き換わったのではなく
写真はことばに置き換わってる
Idu:
私のことばはそういえば、
話しことばみたいなきちっとしてない感じかもしれない
sb:
そうだと思う
Idu:
うん、日常のなかにある空気みたいな
sb:
ストレートな表現が多い
Idu:
そのとおり そのまんまだねー ひねりがない
sb:
いのちのかたち、という名前が付いた前と後で、
絵を描く時に向かう気持ちの変化はある?
Idu:
そうだね…
自分のなかに 大きないっぽんの
安心できる柱が立ったような
そのことばで、小さな作品達、わけのわからないものが
生み出せた感じはあるかもしれない
sb:
うんうん
それは大事なことだ
Idu:
引き出してもらえたのかもね
タイプがいくつかあったから
どれでいきましょうかって話だった、確か。
一年間のドローイングを見てそう感じたみたい。
sb:
あらいさんはことばによる気付きがたくさんある
Idu:
反応?
そうだね、そうかもしれない。
sb:
無意識にしていて、改めて気づくこと
Idu:
なんてことない会話から
けっこう自分で深く考えてることあるかも
sb:
それに気付くことで、肯定的になれること
Idu:
そうだ、 私はことばに
良くも悪くも敏感な質だと思う。
残ってしまう身体のなかに。
sb:
うんうん
Idu:
そうだった。
流せば楽なのにいちいち受けとめる方だ
sb:
考えすぎる性格だ
もちろんいいこともある
Idu:
そうー よく分かるね!
いいこと…
あまり意識したことない。
よく考え過ぎだよって言われる。
sb:
うん
Idu:
前に比べたらだいぶ自由だと思ってるけど
sb:
うんうん、特にキャンバスの上では自由だ
Idu:
あ、そうそう
最初はそんな気持ちの
はけ口だったかもしれない描くこと。
昔から制作自体もそうだけど
sb:
うん
出口ができたんだ
Idu:
そう、描くことは自分のためだった
sb:
今回本に書いたことばに
「同じ道すじをたどって、気持ちに寄り添う」
というのがあって
Idu:
うんうん
sb:
自分のために描いた道すじが、
誰かも通る道になる
Idu:
わー
sb:
そんなイメージがあった
Idu:
ひょー
鳥肌…
sb:
だから、そこに嘘があったらいけないし
Idu:
深い…
sb:
思考から離れることが大事だと思った
Idu:
そうだね。 嘘はやっぱり 伝わってしまうと思う
すごいなあ つゆきくん
言語化にならないところでパルス的に
受信する人には伝わるのかもね。
sb:
きっとそうだ
Idu:
あ、みんな感じてる本当は
sb:
言語化できないからいいんだと思う
Idu:
でも小さすぎて?
伝わらないように 感じてしまうことも
最終的に 説明できない絵になった笑
sb:
うんうん
Idu:
次はどこいくのか 自分でもわからないよー
いのちの周辺てことは
sb:
薄い味付けの方が繊細に旨味を感じることができる
Idu:
変わらないとは思うけれど
sb:
小さい音の方が耳をすます
Idu:
日本料理!
みたいな?
うんうん
sb:
そうだね!
Idu:
写真もささやかのことばのイメージって
言われたことある
sb:
うん
Idu:
そのときは、あまり良くない感じで
もっとばーんとしたのやりなよみたいな
sb:
うんうん
Idu:
感じだったけど
でもどうもできない
私には
sb:
うん
比べることはよくないことだ
比べることをしなければ、
もっと個性は伸びる
Idu:
昔はなんだか すごく勢いがあって
どうだーみたいなのが
良い作品ていう勘違い
違うものになろうとしてたのかな
sb:
うんうん
Idu:
若さと、他と比べてだというのもあるかな
インパクトに欠ける自分
sb:
そっかあ
インパクトは、
どこまで行けば満たされるのか
Idu:
限りはなさそう
sb:
ふふ
Idu:
自分をわかってなかった
今よりもずっと
sb:
今は大分分かってきたね
Idu:
ささやかであることが
どれだけ素晴らしいことか
sb:
うんうん
続けられることは、
嘘のないことだけだと思う
Idu:
小さなこえが どれだけ
大きな エネルギーを持っているのか、とか
sb:
大きな声は、嫌でも聴こえてくる
Idu:
自分の経験と
そう考えると経験は自分のかたちを
俯瞰できる材料なんだね。どんな経験も
sb:
ほんとそうだー
Idu:
今回なんとなく
こえをきくと つけたんだけど
sb:
うん
Idu:
いろんな意味に とらえられるから
いいなって
理由は単純なんだけど
あまり考えてないの
sb:
うん
わかるような気がする
Idu:
あるとき、大切なひとのこえを
自分が思い出せない気がして動揺してしまって
sb:
うん
Idu:
顔は忘れないのにこえは簡単に…
なんだかそんな自分が嫌だと少し思って
こえをしっかり
sb:
うんうん
Idu:
いろんな人の刻んでおきたいって思ったんだー
自分のこえでもあるなと、後から
sb:
自分の声かあ
確かにそうかも
Idu:
うん
sb:
地元でできるのは嬉しいことだね
Idu:
嬉しい反面 妙なプレッシャーを
自分に与えているみたい。
でももう時間ないし。
これで大丈夫とおまじないをかけるくらい
sb:
うんうん
絶対大丈夫だー
それに時間のないのはいつものことだ笑
Idu:
ふふー 思考は現実化するらしいから。
良い想いでいたら きっとよいね
sb:
作品楽しみだ
それでは最後に、本について
Idu:
はいはい
sb:
やっと着いた笑
Idu:
ごめん
sb:
いや、すべて大事なことばかりだったよ
Idu:
ふふふー
sb:
繋がってるからね
Idu:
そうだね
sb:
今回、収録したのは、
前回の個展の作品+新作6点という感じだけど、
ほんとに水ものというか、
Idu:
うん
sb:
前作と新作とでも変わっていってて
Idu:
そうだね 違っちゃった
sb:
ほんとにその時々にしか
描けないものなのだなあと
Idu:
うんうん ライブみたいな
sb:
本ではそれがいい意味で動きになってて
Idu:
そうかー
sb:
旧作と新作は別の日に撮ってるんだけど、
僕の気持ちも、普段のやり取りを通して
変わっていったりしてるから面白かったな
Idu:
いろいろな ものや状況が
重なりあって できたんだね。
sb:
ちょうど、群馬での個展の作品を
作ってる最中に並行してたしね
Idu:
水ものだー
出だしのスタートという感じだった
sb:
うんうん
旧作に関しては1日で撮った
Idu:
次のもすぐに撮ってくれたよね
sb:
もうこの日のこのひざしだ、という日があって
季節が変わったね
Idu:
そっかー ひかりで違うものね
繊細だ
sb:
だって旧作の撮影は5月の頭
そのあとに、
あらいさんの公募展への参加があって
Idu:
うん
夏だったね
sb:
そのあとに新作を描いてもらって
間にことばがあったかな
いくつか書いて
Idu:
うん
sb:
秋の初めくらいに撮った
Idu:
春と秋じゃひかりが全然違っちゃうけど
写真同じ感じにみえたね
sb:
うん、気持ちが一緒のような日だったのかも
Idu:
本来なら同じ日だよね全部
そうじゃないと違ってしまうから自然光なら
sb:
描いた時期が違うから、よかったのかもね
Idu:
結果的に
うまくやろうとしてないから
かえって素晴らしい結果になったのかも
sb:
元々違うのだから、
それはそれでいいのだ
Idu:
みて分かる人はそうそういないと思うな
sb:
たくさん手に取ってもらえるといいな
Idu:
きっとそうなる!
sb:
力強い!
Idu:
レーベルとしても
素晴らしい第一作目だねぇ
sb:
いいこと言うなあ
Idu:
嘘はないよ
はじめ良ければ全て良し
だからー
次もいいのができるね
sb:
うん
Idu:
自分で思っているより
いろんなたくさんのことを
みんな感じてくれてるなと思うと
それだけで嬉しい
sb:
みんな小さな声に耳をすませたらいいね
Idu:
うん。 今せかいはいろいろが
大きな音ばかりだからなぁ。
sb:
ほんとそうだー
スロウボートがぴったりだ
Idu:
その中でも小さくてもすてきな音を
奏で続けられたらいいな。
自分のよろこびとしても
スロウじゃないと やっぱり乗り遅れる
しかし、今回かなりのスピードだったよね
sb:
個展に間に合わせたかったからね
Idu:
スピード出せるときもある♪
本当にねー
sb:
水面下では飛ばしてる
Idu:
ありがとう
sb:
上は涼しい顔笑
Idu:
見えないところで
sb:
こちらこそありがとう
Idu:
寺島さんの作品
良くみたことないから
たのしみだなー
同じ水彩でも違いそう。
いやいや〜
つゆきくんどう考えても大変だったよ
sb:
寺島さんも、もう30枚一気に描いてくれた
Idu:
すごー
ボリュームあるね
sb:
勿体無くてまだ内輪にも見せてない笑
Idu:
ええー? 笑
できてからの おたのしみかー
sb:
もう少しちゃんとしてから笑
いや、タイトルが決まったら
Idu:
おぉ
みなさん確実に…
sb:
あとは自分のことだけだー笑
Idu:
それがいちばん大切
sb:
まあでも、本を作るのの半分は自分のこと
Idu:
みんな同じ意見
sb:
やってみてそれが分かった
紙もよかったね
Idu:
うんうんそうだね
うん〜!
質感大事
今日アンディーにDM渡したら
写真よく撮れてるって褒めてもらった。
てきとう写真…
sb:
そして褒められて伸びる
Idu:
あはは
調整はやりだすと きりがなくて
つゆきくんよく分かると思うんだけど
難しいね。
sb:
うん
作品が繊細だ
Idu:
面倒だって言われちゃうタイプだよ。
そこに果敢に取り組んで
すばらしいのが完成〜
sb:
嬉しいなあ
Idu:
事実だ
sb:
力強い
Idu:
つゆきくんがしてくれたんだから
私もじまんできる
よい作品集だよって
sb:
うーん
ありがとう
褒めて伸ばされてる
Idu:
ふふ
でも嘘はないよ 本当に
sb:
うん、ありがとう
Idu:
おやすみなさい〜
sb:
おやすみなさい
いい個展になりますように
Idu:
メンタル大事なのはアスリートだけじゃないね。
よい展示になる気がしてきた。
最後のひと踏ん張り。
sb:
気がしたなら、もう大丈夫だー
あらいいづみ個展、無事終了致しました!
ありがたいことに、持参しました作品集は完売。
感謝でいっぱいです^^
ありがとうございました!